建設業界の2024年問題とは?働き方改革で変わる現場の実態
2024年4月、建設業界に大きな変化が訪れました。「2024年問題」と呼ばれるこの出来事は、現場で働く多くの人たちの日常を変えることになったんです。長年続いてきた「当たり前」が見直され、新しい働き方への転換期を迎えています。
そもそも2024年問題って何なのか?
建設業界の2024年問題とは、簡単に言うと「時間外労働の上限規制」が2024年4月からついに建設業にも適用されたことで起こっている様々な変化のことです。
具体的には、残業時間に以下のような上限が設けられました:
- 原則:月45時間・年360時間
- 特別な事情がある場合でも:月100時間未満、2~6ヶ月平均で80時間以内、年720時間以内
- 災害復旧工事などの場合は一部例外あり
「なんで建設業だけ今まで対象外だったの?」と思う人もいるでしょう。実は2019年に働き方改革関連法が施行された時、建設業は5年間の猶予期間をもらっていました。それだけ業界の働き方を変えるのが大変だと国も認識していたということです。
規制導入の背景にある深刻な問題
建設業界が抱えている問題は本当に深刻でした。現場を見てみると、60歳以上の高齢者が全体の26%を占める一方で、若手の入職者はその半分程度しかいない状況。このままでは10年後に大量離職が起こってしまう可能性が高いんです。
若手が建設業界を避ける理由の一つが、まさに長時間労働や休日の少なさでした。だからこそ、働き方改革は業界の将来を左右する重要な取り組みともいえます。
規制導入前の建設業界って、実際どんな感じだった?
正直なところ、多くの現場で週休1日が当たり前でした。驚くべきことに、40%の労働者が週休1日以下で働いているという実態もありました。
当時の現場あるある
- 「今日も残業確定」が口癖
- 家族との時間が取れない
- 体力的にきつくて長く続けられない
- プライベートの予定が立てられない
こういった状況が、若手の離職率の高さや人材不足の原因になっていたのも事実です。
2024年4月以降、現場はどう変わったのか?
労働時間に起きた変化
2024年のデータを見てみると、年間労働時間が前年より84時間減っています。これは月に換算すると7時間、つまり1日分の労働時間が減ったということになります。
さらに、月間の就業日数も前年比で0.7日減。これは週休2日制の推進が実際に効果を上げていることを示しています。
実際の現場の声を聞くと、「週2日休めるようになって、久しぶりに家族と過ごす時間ができた」「疲れが取れるようになって、仕事の集中力も上がった」といった前向きな意見も多く聞かれます。
気になる収入への影響は?
「残業が減ったら給料も減るんじゃ...」と心配していた人も多かったと思います。確かに2024年は1.7万円の微減となりましたが、実はその前年の2023年に年収が33.6万円も増加していたんです。
この増加の理由は大きく2つありました。一つは基本給(所定内給与)の上昇、もう一つは月60時間を超える残業の割増賃金率が25%から50%に引き上げられたこと。つまり、残業時間は減ったけれど、基本給のアップでカバーされている形になっています。
働き方そのものの変化
現場では単純に労働時間が減っただけでなく、働き方そのものが変わりつつあります:
- 週休2日制を前提とした工程管理
- ICTやDX技術の導入による効率化
- 適正な工期設定への見直し
- 無駄な作業の見直しと標準化
例えば、清水建設では独自のDXソリューションを開発して、全社的な生産性向上を実現しています。3次元モデリング(BIM)を活用することで、設計から施工まで一貫した効率化を図っています。
企業側はどう対応しているのか?
採用市場の活発化
人手不足感は依然として高く、53.2%の企業が人手不足を感じています。そのため中途採用も活発になっていて、求人件数は2019年比で190.2%増という状況です。
初年度年収も上昇傾向にあり、企業側も良い人材を確保するために待遇改善に力を入れているのがわかります。
企業が抱える悩みと課題
一方で、50.7%の企業が2024年問題は「悪い影響を及ぼす」と回答しているのも事実です。主な悩みとしては:
- 労働時間削減と人材確保の両立の難しさ
- 工期遅延のリスク
- 生産性向上のための投資負担
- 従来の業務フローの見直しの必要性
でも、これらの課題に対して多くの企業が前向きに取り組んでいるのも確かです。
具体的な対策の動き
国土交通省も週休2日を前提とした発注を推進していますし、各企業もDX・ICT技術の導入を積極的に進めています。例えば:
- ドローンを使った現場測量の自動化
- AIを活用した工程管理
- RPA(自動化ツール)による事務作業の効率化
- クラウドを活用した情報共有システム
ある中小の建設会社では、RPAを導入したことで年間約1,500時間、つまり約3割の定型業務を削減できたという事例もあります。
現場で働く人たちの声から見える変化
転職市場のデータを見ると、興味深い変化が起きています。「休日や残業時間への不満」を理由とした転職が24.8%から17.4%に減少しているんです。
これは、働き方改革によって労働環境が実際に改善されている証拠じゃないでしょうか。一方で、「給与」を重視する人は増加傾向にあり、より良い待遇を求める動きも活発になっています。
また、労働環境が改善されたことで、業界内での転職も増えているようです。「前の会社よりも働きやすそう」という理由で転職先を選ぶ人が増えているんですね。
これから建設業界はどうなっていくのか?
ポジティブな変化の兆し
確実に言えるのは、建設業界が若い人たちにとって魅力的な業界に変わりつつあることです:
- 週休2日が当たり前になりつつある
- プライベートとの両立がしやすくなった
- 女性が活躍できる環境も整ってきている
- DX化により肉体労働の負担が軽減
「建設業=きつい仕事」というイメージも、少しずつ変わってくるんじゃないでしょうか。
まだ残る課題
もちろん、すべてが解決したわけではありません:
- 他産業と比べるとまだ労働時間は長め
- 人手不足の根本的な解決には時間が必要
- ベテラン技能者の技術継承の問題
- 中小企業でのDX化の遅れ
今後の展望
でも、方向性は間違いなく良い方向に向かっています。DX化による生産性向上が進めば、現在の人手でもより多くの仕事ができるようになるでしょう。働き方の多様化も進んで、テレワークができる職種も増えてくるかもしれません。
何より、建設業の社会的な価値が再認識されつつあります。インフラの維持・更新、災害復旧、脱炭素社会の実現など、建設業界の役割はますます重要になっています。
まとめ:転換期を迎えた建設業界
建設業界の2024年問題は、確かに業界にとって大きな転換点でした。労働時間の上限規制という「外圧」によって、長年変われなかった働き方が変わりつつあります。
データを見る限り、労働環境は確実に改善されています。労働時間は減り、週休2日が広がり、現場で働く人たちの不満も減ってきている。もちろん課題はまだ残っていますが、前向きな変化の方が多いんじゃないでしょうか。
これから建設業界を目指す人へ
もしあなたが建設業界への就職や転職を考えているなら、今がチャンスかもしれません。業界全体が働き方改革に真剣に取り組んでいて、以前よりもずっと働きやすい環境になりつつあります。やりがいがあって、社会に貢献できる仕事を、より良い環境でできるようになってきています。
2024年問題は「問題」という名前が付いていますが、実際には建設業界がより良い業界に生まれ変わるための「きっかけ」だったのかもしれませんね。これからも現場の変化を見守りながら、より良い建設業界の実現に向けて、みんなで取り組んでいければと思います。

